米沢有為会会誌復刊30号(昭和56年6月)
興譲館だより(昭和56年、1981年)
東京興譲館
先頃までの肌寒さとはうって変って、近頃は軒端を吹き過ぎる風にも暖かい日向の匂いが運ばれてまいります。自然、道行く人の服装も軽快となり、木々の緑も日ごとに色鮮やかとなっていく中で、何もかもが躍動的な感さえ致します。この寄宿舎におきましても新年度を迎え一段と活発さが加わってまいりました。と申しますのは、今年度の入舎生数が例年度に比べて飛躍的に伸びたからなのです。ここに3、4年、当寄宿舎においては皆様の御多分にもれず、入居者の減少という問題を深刻に受け止めておりました。しかしながら今回は、いろいろな方々の御協力と積極的な宣伝方法が効を奏しましたものか、入舎生は一挙に17名を数えるに致りました。在来の舎生は一時にしかも多数の新しい顔ぶれを迎えるにあたり多少面喰らったような感じで、他方、入舎生は初めての環境になかなか溶け込みにくいのでしょう。4月当初はお互いにどこかちぐはぐでよそよそしい素振りが見受けられました。しかし今はもうそれも薄らいで和気あいあいとした雰囲気が所々見られます。さて昨年を振り返ってみます。新入生歓迎マラソン、春、秋2回の内外大掃除、寮祭、寮生の親睦旅行(房総1泊)、と例年通り各種活動が行なわれました。これらに一貫して言えますことは、舎生の協力態勢が整って、ただ参加するだけでなく積極的にもり立てていこうとする意識の高まりが感じられました。これまで私共の経験した限りにおきましても最善の効果をあげ得たように思われます。それから、最も特筆すべきなのは、複数の舎生が定期的に集合して各自の得た情報を持ち寄り、それを議論することによりいっそう高次元なものに高めていこうとする気運が舎生の間に自主的に芽生えたことです。これから当寄宿舎生活をさらに実りあるものとするためには各種設備の充実もさることながら、これらの動きをもり上げていくことが重要であると思われます。最後に舎生を紹介致します。四年次生
今 井 康 弘 (明治大・文・英米文学)
岩 瀬 行 弘 (法政大・社会・応用経済)
後 藤 義 之 (専修大・経済・経済)
近 野 富 裕 (東京農業大・農・栄養)
佐 藤 芳 明 (立教大・法・法)
情 野 敏 (東京農業大・農・農芸化学)
三年次生
青 木 徳 隆 (東京理科大・理・物理)
稲 村 修 (神奈川大・経済・経済)
太 田 美 徳 (専修大・経済・経済)
下 平 俊 之 (二松学舎大・文・中国文学)
鈴 木 誠 吾 (神奈川大・法・法律)
横 山 真 彦 (専修大・商・会計)
二年次生
黒 沢 浩 昭 (拓殖大・政経・経済)
桜 井 道 夫 (東海大・工・生産機械工学)
島 貫 和 浩 (法政大・経営・経営)
田 中 昭 雄 (神奈川大・法・法律)
千 葉 尚 雄 (東京薬科大・薬学)
森 綱 一 郎 (早稲田大・二文・日本文学)
由 井 昭 二 (日本犬・農獣医・林学)
一年次生
石 坂 安 彦 (亜細亜大・経営・経営)
伊 藤 徹 (神奈川大・経済・経済)
伊 藤 俊 明 (早稲田大・法)
今 井 利 男 (和光大・人文・人間関係)
今 井 敏 博 (高千穂商科大・商・商)
今 井 弘 幸 (神奈川大・外国語・英語英文)
漆 山 健 一 (東京都立大・工・電気工学)
海 老 名 悟 (中央大・経済・経済)
大 熊 伸 二 (東京工業大・第一類)
菅 野 亮 一 (専修大・経済・経済)
本 間 浩 (東京農業短大・農業)
三 原 修 (電気通信大・電気通信・応用電子工学)
迎 田 俊 教 (駒沢大・仏教・禅)
横 山 明 宏 (成蹊大・経済・経済)
仙台興譲館
寮の中庭では一昨年近所から戴いた遅咲きの八重桜がようやく2、3の花をつけ始め、その一角の小さな菜園では、しその芽も一勢に顔を出しました。もうすっかり春の装いを整えた今日この頃です。
しかし、思い起せば4ヶ月前の12月24目、ここ仙台の街は例年にない大雪に見舞われました。30センチ程度で大雪だとはちゃんちゃらおかしいと言う米沢生まれの集団も、豈図らんや、まる一日の停電にはなすすべがなかったようです。しかし、その寒さと暗闇の中、ロウソクの灯をともし、室内遊技に興じていた一群もあったとか。
それはともかく、有為会90周年記念行事の一環として行っていただいた寮の修繕後であったため、大きな損害も雨もりもありませんでした。ただ今回の修理では主に新館の方に手をかけて戴きましたが、残された旧館は手洗いも使えないままになっております。手前勝手ながら、早期の解決をお願い致したいと思っております。
ところで、大雪ではびくともしなかった寮も、公共料金の値上がりには、大きなあおりを受けました。やむなく雑費徴収を値上げすることとなり、今まで押さえてきた寮費2万円のラインを今年は超えそうな気配です。また、物価高の折、寮母さんのやりくりにも限界があり、食費の値上げも余儀なくされそうです。
この春も5人の卒業生が寮を巣立っていきました。その寂しさもつかの間、同じ5人の新入寮生を新たに迎え、早速寮の大掃除が先日行われました。日頃の垢を落してさっぱりした寮を改めて見直す一日です。ひとつひとつの行事や日々の生活の中で互いに協力し、また、磨きあう心を一人一人が持つことができる寮生活をこれからも目指して行きたいと思っています。
初々しい1年生から、らしからぬ1年生まで多種多様の顔ぶれに、在寮の上級生20名を加えた総勢25名の紹介を最後にさせていただきます。
四年生
高 橋 賢 治 (東北大・教)
後 藤 源一郎 (東北大・法)
高 橋 邦 彦 (東北福祉大)
蔵 俣 邦 彦 (東北学院大・法)
半 田 和 彦 (東北大・文)
竹 田 浩 行 (東北大・理)
三年生
嶋 倉 誠 (東北大・農)
菅 野 和 弘 (東北学院大・文)
鈴 木 泉 (東北大・農)
寒河江 忠 篤 (東北大・工)
二年生
五十嵐 浩 幸 (東北大・理)
石 川 裕 之 (東北大・経)
岩 間 泰 実 (東北学院大・経)
大 浦 雅 宏 (東北学院大・経)
加 藤 裕 司 (東北大・工)
上 村 英 俊 (宮城教育大)
工 藤 為久夫 (東北大・理)
佐 藤 孝 喜 (東北大・理)
鈴 木 秀 利 (東北大・経)
土 屋 一 成 (東北大付属医療短大)
一年生
後 藤 利 明 (東北学院大・法)
桜 井 真 行 (東北学院大・経)
中 津 山 恒 (東北大・工)
中 村 健 一 (東北大・工)
広 瀬 純 (東北学院大・文)
札幌興譲館
我が寮の在寮生は14名で、昨年度と同じく定員の17名を3名下回っている。寮運営に当っての問題点も、この定員割れに集約されると言える。寮生の減少イコール寮生個々の負担増を意味するからである。寮生減の原因としては、(1)我が寮の主たる構成員となる北大合格者(受験者?)が減っていること。(2)相部屋寮を敬遠する傾向にあること。(我が寮と他の個室寮の選択を迫られた北大合格者が、結局個室寮を選んだ例が本年度あった。)等が考えられる。
(1)に関しては、昨年山形県内の主要高校に市内の「観光写真」を送り、PRに努めたが、効果は不明である。また、(2)に関しては、時代が時代だけに(?)解決策はないといってよく、「物好き」が入ってくるのを待つほかない。とにかく、我々は無力に近く、ただただ、入寮希望者の増大を祈るしかないのである。
ここで、性懲りもなく札幌のPRを......。
4月。期待と不安の月。泥にまみれた残雪と日増しに濃さを増す緑に彩られた月。それは新入生の心そのままに。
5月。充電の月。来たるべき爆発に備え、ひたすらエネルギーを蓄える月。桜も咲くが、何故か本州ほどには似合わない。
6月。爆発の月。この世の花が、みな一時に咲いたかと見紛うほどに。街は花の香に包まれ、花弁は地面を覆い尽す。一年で一番活気溢れる月。
7月。安定の月。すっかり落ち着いた緑と爽やかな空気の月。そして皆の心は夏休みへと駆り立てられる。
8月。翳りの月。本州並みの暑さなどほとんど感じることなしに、朝晩の空気の冷たさにふと秋の気配を感じる月。この月も下旬になると、もはや「秋」である。
9月。寂寥の月。試験の月でもあるが、過ぎ去った夏を想い、妙に人恋しい月。また、この月、山形の秋の風物詩、「芋煮会」が、有為会の方々を招いて催される。
10月。温もりの月。木の葉が散り始め、朝晩肌寒さを感じる月。皆そろそろストーヴをつけ始める。(我が寮は石炭ストーヴである。)
11月。荒涼の月。樹木はすっかり葉を落し、あたりはすっかり冬景色である。だが雪はまだ降らないので、街は正に灰色と化す。
12月。望郷の月。雪が降り出し、街を白く染め上げる。だが、何故か雪に体温を感じ、慌しさの中に故郷のことが頭をかすめる。
1月。張り詰めた月。一番寒い月である。空気が凛と張り詰め、街を覆い尽した雪がギラギラと輝く。この月は或る味では一番美しい。
2月。忍耐の月。雪景色にも飽きが来る頃である。街には 一月程の輝きはもはやない。試験もある。寒さをひしひしと感じる月である。
3月。日毎に日が長くなり、街も明るさを取り戻し始める。卒業生が去って行く。そして、新たな一年がそこに...。
在寮生
岡 崎 修 三 (理・大学院 山形南)
丹 野 久 (農・大学院 興譲館)
佐 藤 清 二 (工・大学院 長 井)
安 達 勝 茂 (工・4年 山形南)
大 泉 勝 利 (農・3年 寒河江)
船 本 昌 幸 (工・3年 興譲館)
佐々木 雅 夫 (法・3年 新庄北)
鈴 木 哲 史 (理・3年 興譲館)
黒 沢 政 浩 (法・3年 興譲館)
堤 啓 一 (経・3年 興譲館)
高 橋 健太郎 (法・3年 千葉県立東葛飾)
荒 木 正 也 (教養2年 山形東)
斎 藤 広 道 (教養1年 興譲館)
松 本 誠 治 (教養1年 山形中央)