米沢有為会会誌復刊24号(昭和50年6月)
興譲館だより(昭和50年、1975年)
東京興譲館
桜の花も散ってしまい、また興譲館だよりの筆を執る時期とあいなりましたが、今年は例年と趣を変え、3部に分けた、たよりと致します。即ち、第1部は寮の紹介、第2部は寮生紹介、そして第3部は寮生による寮生活の感想です。Ⅰ 寮 の 紹 介
1.所在地; 調布市入間町1丁目36
(電)309-3302
京王電鉄仙川駅より徒歩15分、
小田急電鉄、成城学園前駅より小田急バス調布駅南口行きで5分
2.収容人員;48名(6畳に2人)、
鉄筋コンクリート4 階建で、置賜地方出身の学生を収容
3.寮 費;食付月額1万3千円
4.運 営:舎生の自治により運営し、委員会を設置。
構成は、委員長1名、庶務、会計、文化厚生の各委員が夫々1名。年2回、舎生会において互選により選出す。舎生会は寮生の総会にして、月1回定例会を開催。
5.行 事
・成 人 式 1月15日
・卒業生予餞会 2月中旬
・新入寮生選考 3月末
・新入寮生歓迎会 4月中旬
・開館記念日・寮祭 11月下旬
・旅行会 春秋2回
・部屋替え 年2回
・先輩との座談会 年5回
・館長との懇談会 毎週土曜午後
・山形県学寮連絡会 年2回
6.座談会 (これは有為会々員及び学生が先輩をお招きし、話をうかがう会であり、これ迄の講師と題目は次の通りです。)
・昭和48年4月21日
「海外に目を拓け」
アメリカ大使館経済顧問 木 口 浩 一氏
味の素総務部長 滝 沢 信 夫氏
・昭和48年5月26日
「学生運動の実態」
警視庁職員協会理事 遠 藤 竜 次氏
「学生々活の思出」
京浜レールエ業社長 鈴 木 千代翁氏
・昭和48年6月23日
「ジャーナリズムの諸問題」
プレスマンクラブ代表幹事 石 坂 晃 一氏
「わが社の事業」
東芝製薬社長 中 西 光 雄氏
・昭和48年7月27日
「躾教育について」 (国立研究生対象)
お茶水女子大学教授 宮 田 丈 夫氏
・昭和48年10月6日
「学生時代の思出」
帝京大学講師 片 桐 三 郎氏
・昭和48年11月25日
「石油問題」
シェル興産 役員 角 屋 誠 一氏
・昭和49年4月20日
「超能力の話」
工学博士 関 英 男氏
「海外出張」
日本フィルコッ顧問 長 信氏
・昭和49年5月25日
「四次元の話」
工学博士 関 英 男氏
・昭和49年7月13日
「働き党水五則」
日刊工業新聞グループ顧問 川 上 '豊 明氏
・昭和49年9月28日
「食糧問題」
早稲田大学教授 田 中 駒 男氏
・昭和49年11月16日
「低温科学の話」
日本酸素役員 理博 門 奈 五 兵氏
「学生に訴える」
三菱銀行調査役 仁 科 盛 夫氏
Ⅱ 寮 生 紹 介
大学院
菊 地 隆 雄 大東文化大 文(中国文学)
4年生
小 野 庄 士 東京教育大 理(植物学)
後 藤 茂 法政大 エ(電子工学)
駒 形 吉 則 中央大 法(法律)
島 津 清 美 立教大 法
塚 田 富 夫 早稲田大 教育(数学)
長 瀬 照 文 中央大 理工(工業化学)
船 山 現 人 明治学院大 経済(経済)
古 山 満 日本犬 法(経営法学)
遠 藤 稔 日本犬 法(政治経済)
鈴 木 和 行 明治大 政経(経済)
尾 形 賢 二 中央大 文(英文学)
山 口 徳 芳 明治大 政経(経済)
3年生
安 部 善 明 早稲田大 法
長 俊 彦 星薬科大 薬学
青 木 厚 夫 専修大 経営(経営)
梅 津 昭 二 明星大 理工(電気工学)
本 間 敏 治 専修大 経営(経営)
森 谷 国 弘 東京教育大 農(農村経済)
真 石 博 文 専修大 経営(経営)
寺 島 博 電気通信大 電気通信(電子工学)
2年生
木 村 弘 信 東京大 理科I類
戸 田 友 一 東洋大 文(哲学)
平 卯太郎 早稲田大 理工(電気工学)
鈴 木 久 夫 法政大 経済(経済)
竹 田 順 正 慶応義塾大 経済
後 藤 仁 法政大 法(法律)
相 馬 茂二郎 明治大 政経(経済)
島 貫 正 夫 慶応義塾大 法(法律)
高 橋 和 宏 専修大 経済(経済)
有 路 充 専修大 経済(経済)
赤 間 俊 明 東京経済大 経済
兵 庫 博 信 法政大 経済(経済)
1年生
山 田 栄 造 中央大 法(法律)
鈴 木 実 明治大 法
吉 田 健 一 早稲田大 教育(教育心理)
渡 辺 洋 男 立教大 経済(経営)
高 橋 泰 嗣 電気通信大 電気通信(電子計算機)
伊 藤 秀 一 法政大 社会(社会)
山 崎 宏 東京経済大 経済(経済)
山 下 芳 昭 千葉商科大 経済(商業経済)
鈴 木 伸 平 東京農業大 農(農業拓殖)
伊 藤 久 夫 専修大 文(英文学)
石 川 幸 隆 法政大 文(地理)
宮 内 良 二 日本犬 商(経営)
福 地 賢 二 桜美林大 商
Ⅲ 寮生活雑感
1千万東京都民の朝、夕の話題を独占し、満開の桜のもとで行なわれた、石原対美濃部の激烈な戦いを演じた都知事選も終り、ようやく春の落ちつきらしきものをとりもどした今日この頃です。
その春のすき間を縫って、1人又1人新寮生が希望に燃えて集まってくると、2月初め寮の重鎮的存在であった7名の諸先輩を不況のあらしが吹きあれるきびしい現実に送り出して火が消えたようになった寮も久方ぶりに生々したものに感じられます。
昨年は、高橋おばさん1人に寮生のめんどうを見てもらい、口では言い尽せぬ御苦労をおかけしていましたが、館長さん、井熊先輩をけじめとして多くの方々の御骨折、気持ちよく引受けていただいた斎藤おばさんには寮生一同深く感謝しております。
このように寮生を取りまく環境は徐々によくなっています。その中で我々は昨年度、寮生の意気を高め、また親睦を深める意味でいろんな行事を行なって来ました。新入生歓迎をかねての早朝マフソン、コンパ。東京にある山形県の5つの寮でやった5寮対抗のバレーボール大会、野球大会、春の内房富浦、秋の伊豆湯ケ島への現地集合、現地解散の寮ならではの恒例の旅行、寮祭などです。
特に昨年のハイライトは寮祭でした。寮祭は、某大学の舞踏研究会の部員であるS君の熱心な指導で社交会の花形のつもりで踊ったダンスパーティ、某女子大の女学生達との混合チームで鼻の下をのばしながらやったバレーボール大会、日頃なまった体にむち打って走った学年対抗の駅伝大会、仙川駅からねり歩いた花笠踊りのパレードなどが主な内容です。
その中でも、華やかだったのはなんといっても花笠パレードでした。以前寮の先輩方で1度やられたことがあるとか聞いていましたが、この2・3年御無沙汰だったのでいざやるとなるとなかなかうまく行かず困まりはててしまいました。しかし、米沢市役所のはからいで米織組合からそろいの浴衣を貸していただけることになってからはトントン拍子に進みました。当日は五色の浴衣で仙川駅からうねり歩き付近の人だちからさかんな拍手を送られたことを昨日のことのように思い出します。
しかし、寮生活に問題がないわけではありません。大学自体が大衆化し、本来的意義であるはずの真理探究ということが忘れられがちで、レジャーランド化、学士免状配給場化してしまい、大学生全休にシラケムードが広がっているのは否めない事実です。寮もそういうムードから、孤立無縁であろうはずがありません、その顕著な例が舎生会です。結局どうしても事務的な話に終ってしまいがちです。このままで行けば寮は、ただのなれあいで住んでいる安アパートとしての意味しかなくなるのではないかと思うとなんかむなしいような気がします。
若者とは本質的にシラケていないはずだと思います。なんか熱いものをもっているはずです。なれあいというものには極端に反発するはずです。しかし、今の、特に私大のマスプロ教育体制の中で、何か体の中からわき上ってくるものを、表現できる場所を捜しあぐね、疲れはててしまい、そういう情熱が沈殿化し埋没してしまっているのではないかと思うのです。
こう考えてみると、寮とは大学生の持つ若者本来の情熱をぶっつけあえるひとつの適切な場所ではないでしょうか、個々の人間か、人生を、学問を、政治を、愛を、口からあわを飛ばしながらぶっつけあう、そこから生まれる1つの緊張感こそが寮の存立の第1条件ではないでしょうか。
(興譲館寮305号室 後藤仁記)
仙台興譲館
今年もまた春となった。そんなある日の寮をのぞいてみよう。
夕食後のひとときである。ある部屋では、誰かがギター片手に歌っている。また他の部屋からはジャラジャラと洗牌の音が聞こえてくる。その次の部屋はどうだろう。ここは3人で何やら話をしている。茶でも飲もうと集まっているらしい。
A「今年は安久津さんと大浦さんが社会人てわけだな。」
B「うむ、給料がでた頃遊びに行くって言ってあるんだ。」
A「なるほど。それで何人新しく入ったなや。」
B「お前は都合で新寮生選考会に来てながったな。んと、4人だ。」
C「去年は6人でその前が7人だから、年々減ってくみたいだ。」
B「やっぱり寮は敬遠されんなだ。束縛されっと思ってんなでないがい。ほんとはそんなことないと思うげんと。......実際、みんな自由にやってるもんな。」
C「少しは束縛があんなは当り前だと思うな。束縛というよりは共同生活していく上での決まりみたいなもんで、それはどこにいっても同しだよ。」
B「いや、新寮生が言ってだったけど、酒を無理に飲ませられるとかっていう悪いイメージをもってんだ。」
C「そいつはイメージでなくて本当のことだべ。」(一同笑い)
A「でもよ、内のクラスのやつなんだげんとも、下宿してて、気の弱いやつらしくて、なかなか友達ができなくてな、一時ノイローゼになったのがいるよ。そいつか寮なんかにいたらいがったんでないがい。」
B「それは特別だろうけど、五月病てのがあるんだってな。家を離れて1ヶ月位になると寂しくなるてのらしいけど、ひとり暮しの人は特にひどいべな。」
A「寮の場合、費用が安いっていうのが1番の魅力だな。」
B「それはそうだ。親に迷惑はかけられないしな。」
C「ほう、めずらしいこと言うなあ。」(笑い)
ポットがくつくつと音を立て、湯がわく。
B「そろそろいいな。これ高いお茶だけど、アルバイト先で安く分けてもらったんだ。」
そういいながらお茶を入れる。
A「ところで去年はよかったよ。畳の表がえしてもらったもんな。」
C「畳とナントカは新しいほうがいいっていうけど、新しいとゴミが出なくていいよ。」
B「そういえば洗濯器なんかも購入してもらったし、今のおばさんも、支部長の小松さんのほうから紹介してもらったんだもんな。」
C「ほんとに助かったよ。」
B「前のおばさんが9月にやめて、今の秋葉おばさんが来てくれたのは12月だから3ヶ月間自炊してたんだな。」
A「ちょうど9月のテスト前にやめられたからほんとにまいったよ。俺も2・3日作ったけどめんどくさくて、後は学生食堂で間に合わせた。」
B「自分の食べるものぐらい自分で作れなくちや......。」
A「いや、作んなはいいけど、洗うのがなあ。」
C「洗うなんてこと考えてたのか、いつも皿をためてるくせに。」(笑い)
A「でもな、最近は芋の煮方も知らない女もいるよ。前の秋の合ハイのときだけど、作ったのは俺達だったもな。」
C「そういえば合ハイのほうはどうなってだ。」
B「まだ決まってないよ。気が早いなおまえ。」
C「いや早いほうがいいよ。去年だって早く申し込んだから大勢来たんだ。あちらさんは申し込みが多いから後になると飽きて来なくなるんだ。」
A「去年はS短大とやったし、その前がM女子大だったな。今年はどこがいいかな。」
B「そうだな。係に言っておかなんねな。」
しばらく話は続き、お茶もさめた頃、誰ともなしに言った。
「そろそろ行こうか。」
3人は立ち上がり、なじみの赤堤灯に向かった。春とはいえ夜はさすがに冷えこんでいる。しかし桜ももう咲きかけて、もうすぐ、花見のシーズンを迎える。
○寮 生 紹 介
大学院
海 野 洋 東北大 理
4年生
遠 藤 雅 弘 東北大 経
金 内 斉 東北大 工
佐 藤 悦 雄 東北学院大 経
清 水 智 誠 東北学院大 経
鈴 木 益 夫 東北学院大 経`
関 猛 東北大 経
宮 崎 努 東北大 工
3年生
大 場 正 博 東北大 工
小 浦 今朝雄 東北大 工
佐 藤 政 司 東北大 理
高 橋 修 一 東北工大
渡 辺 明 夫 東北大 工
2年生
安 部 俊 明 東北工大
石 塚 諭 東北福祉大
上 杉 則 彦 東北大 工
佐 藤 茂 次 東北大 農
鈴 木 祥一郎 東北大 理
竹 田 吏 東北工大
星 裕 之 東北福祉大
武 藤 司 東北工大
山 口 浩 東北大 工
我 妻 宏 司 東北福祉大
渡 辺 雅 諭 東北工大
1年生
後 藤 則 夫 東北大 工
小 林 陽 一 東北大 工
錦 斗美夫 東北大 農
船 山 政 志 東北福祉大
札幌興譲館
3月に、遠藤・鈴木(吉)両君を卒業生として送り出し、さらに5名が退寮するに及んで、すっかり静まりかえっていた当寮も、この4月に6名の新入生を迎えて、一気に賑やかになってきた感じがする。今年度も寮生一同、一致団結して行きたいものである。さて、昨年度を振り返って見るに、寮の雰囲気がずいぶん変わったような気がする。4月の寮生総会では、文化行事の意義に対する寮生の意見が衝突し、夜中の1時すぎまで議論したが収拾がつかず、次回持ち越しということになった。次の寮生総会で何とか解決したものの、このような事態を招いたのは、成文化された規則がないためであるという結論に達した。そこで寮則委員会を設けて、「米沢寮寮規」なるものが制定されたのである。その中から一部抜粋してみると、
『(4)罰則
寮生総会、寮内清掃を寮長の許可なくして欠席した者は、3日間寮内清掃に従事しなければならない。』
以上でもわかるように、厳しいものであってこれ以後、無断欠席は無くなったが、寮規に盛り込まれていない面では、以前に比して少々実行されない事が増えたのは遺憾である。
かたい話はこれぐらいにして、我々の生活の一面を紹介してみよう。毎週月曜と木曜にマンガ委員なるものが漫画を買って来ると、読む順番があっという間に決まって、最後の人に回ってくるのは3日後ぐらいである。そして、酒の席では「シュワッチ」とか「マタンキ」「イヤハヤナントモ」「シケイ」などという言葉が飛び出して、実に楽しい。漫画を見ているのか、見られているのかわからない気がする。中には、3日間も漫画を見ないと死にそうだとまでいう人がいるのだから、漫画の当寮に及ぼす影響たるや、莫大なものである。
次に、昨秋近隣の寮生が一同に集まって、盛大に行なわれた寮対抗運動会のヒトコマから某寮との相撲の一戦を、
先鋒戦 とっつあん山、柔道で鍛えた足腰を利して、相手まわしを深くとって背負投げ気味に上手投げが豪快に決まって、まず一勝。
次鋒戦 正ちゃん山、だだをこねるような差し手争いから、細身ながら、がむしゃらに押し出して、2勝目。
中堅戦 仁山、日頃のおとなしさが出て寄り切られるかに見えたが、うまく回り込んで、体力にものをいわせて、3勝目。
副将戦 ベラの川、団休戦の勝負はついたが気を抜かず、持久戦に持ち込み大きな体を利して、ジリジリ出て、土俵際では小技を使って器用な所を見せて、4勝目。
大将戦 啓ちゃん岳、大きな体を、落ち着いた足さばき、見事なハズ押しで大相撲マッサオという取り口で圧勝、場内あっけにとられてただ呆然とするばかり、さすが当寮の横綱であるこれで5戦全勝。
この相撲の部では、決勝で仙台寮に惜しくも負けて準優勝に甘んじたが、次いて行なわれたこの日のフィナーレ、8百メートルリレーでは、佐藤(俊)、須貝、横山、芳賀と老若取りまぜたチームで他チームを断然引き離して優勝。他にむかで競争でも、日頃のチームワークをそのまま発揮して優勝するなど健闘し一時低迷していた総合成績でも、終盤で猛追を見せたが、1位にわずかに及ばず準優勝に終わった。帰寮後、賞品の酒、ビールで酒宴を開き、一同の健闘を讃え合い、次回の運動会での必勝を誓った次第である。今年度は、新入生が現役ばかりと寮生も若がえった事であるので必勝まちがいないであろう。
最後に、当寮の新メンバーを紹介してペンを置きたいと思う。
(M・S記)
大学院
海老名 寛 農学部 林学科
4年生
鈴 木 啓 助 理学部 地球物理学科
須 貝 正 弘 農学部 畜産学科
3年生
北 条 成二郎 工学部 衛生工学部
松 田 和一郎 農学部 農業工学科
孫 田 敏 農学部 林学科
2年生
藤 沢 薫 教養部 理類
横 山 昭 則 教養部 文類
松 田 正 教養部 理類
1年生
久 松 宏 志 教養部 文類
鈴 木 英 次 教養部 理類
鈴 木 高 志 教養部 理類
奥 山 信 也 教養部 理類
川 崎 史 郎 教養部 理類
丹 野 久 教養部 理類