米沢有為会会誌復刊23号(昭和49年6月)
興譲館だより(昭和49年、1974年)
東京興譲館
桜の花も散り日差しが春らしいやわらかさを感じさせるようになってまいりました。ここ調布も今はつつじの花が満開であります。さて当寮では、4名の有為なる諸先輩を社会に送り出しましたが、卒業する先輩が少なかったため在寮生にとってさびしさがひとしおでありました。追出しコンパの時、昨年卒業された先輩が駆け付けてくれ追出しコンパらしい楽しいコンパになりました。
新たに12名の希望にもえたフレッシュマンを迎えました。若さと新鮮さにあふれる新入生諸君も、歓迎コンパで酒の味をむりして教えられ、まだ寮生活に慣れないせいかまだまごついているようです。早く寮生活に慣れ楽しい大学生活を送ってもらいたいです。
さて、昨年はおばさんの事でいろいろありまして秋に遠藤おばさんが辞められ、今は高橋おばさん1人でやってもらっている次第で、わがままな寮生の相手をして下さった苦労は並々ならぬものがあったと思われ、寮生一同深く感謝しております。
当寮では、昨年いくつかの行事が催され、そのなかでスポーツ面では、゛山形県5寮対抗バレーボール大会、野球大会等が催され、好成績を残しました。また寮祭では、寮祭の一環としての学年対抗駅伝大会や、テニスコートを利用してバレーボール大会等、これから5月にかけて、テニス等が行なわれ、日頃の運動不足を解消しようとしております。
また春、秋と合同ハイキングをやり、おもしろく楽しくやっております。
恒例の寮の旅行も、春は伊豆へ、秋は塩山温泉へと行き寮内とはまた別の雰囲気の旅行先で、大いに飲んで話し合い、楽しいひとときを過し大所帯東京興譲館の親睦に一役果たした様です。
最近は寮生の間にもステレオ、テープ、ラジオ、プレーヤーなどで音楽を愛好する人が多くなりどことなくステレオとギターの音楽が部屋に流れてきます。勉強、遊び、スポーツと自分なりにしっかりとやっているようであり、遊びと勉強とはけじめをつけて、毎日を過ごしているようです。我寮も新入生の新しい世代がラジカル的になりそして結合してゆき、生物の進化の過程をつかさどるようなまた寮の新しい伝統を創り上げてゆくことでしょう。
このように私達37名の若人は、互いに切磋琢磨して楽しい寮生活を送っています。
最後に大熊館長さんにはいろいろと寮生一同お世話していただき感謝しております。
では寮生を紹介してペンをおきたいと思います。
4年生
安藤 吉良 日大 法
今井 良之 明星大 理工
菊地 隆雄 大東文化大 文
島倉 静夫 専大 商
鈴木 寿一 明大 商
鈴木 浩美 明大 法
田村 敏之 明大 工
3年生
小野 庄士 東教大 理
後藤 茂 法大 工
駒形 吉則 中大 法
島津 清美 立大 法
塚田 富夫 早大 教
長瀬 照文 中大 理工
船山 現人 明学大 経済
古山 満 日天 法
遠藤 稔 日大 法
鈴木 和行 明大 政
尾形 賢二 中大 文
山口 徳芳 明大 経
2年生
安部 善明 早大 法
長 俊彦 星薬大 薬
青木 厚夫 専天 経営
梅津 昭二 明星大 理工
本間 敏治 専大 経営
森谷 国弘 東散大 農
真石 博文 専大 経営
寺島 博 電通大 電信
1年生
木村 弘信 東大 理I
戸田 友一 東洋大 文
平 卯太郎 早大 理工
鈴木 久夫 法大 経済
竹田 順正 慶大 経済
後藤 仁 法大 法
相馬茂二郎 明大 政経
島貨 正夫 慶大 法
高橋 和宏 専人 経済
有路 充 専太 経済
平田 研 早大 文
赤間 俊明 東経大 経済
仙台興譲館
久しぶりの大雪をもたらした冬も去り、暖さがもどって来たようです。しかし、時おりこたつが恋しくなるほどに寒い日もあり、例年と同様、季節のかわり目を感じさせる天候が続いています。一方、すでに燕や蝶が姿を現わし、また、桜前線も徐々に北上しているというように、春は着々とその活動をはじめたようです。そのうち、ここ仙台でも花見の宴会がさかんに行なわれることでしょう。またその頃には、当寮の玄関わきにある桜の本も、枝いっぱいに花を咲かせ、寮生の目を楽しませてくれるはずです。
さて、今年当寮では、この4月に新しく6人の仲間を迎え入れました。新寮生たちは、もう大分寮生活になれてきましたが、これからコンパ、合ハイなど寮の行事を経験するにつれて、寮の生活や雰囲気に一層なじんでいくことでしょう。またそれと同時に、それぞれの個性を発揮して、寮に新風を吹きこんでくれそうです。
最近寮でのでき事といえば、新しい寮母さんが決まったことと、食費の値上げのことがあげられます。
前の寮母さんは、都合で昨年の11月から休んでおられたのですが、そのままおやめになりました。その間、寮生は適宜数人のグループをつくって自炊していました。新寮生を迎えるにあたって、その前になんとか寮母さんをと願っていたのですが、ちょうどよい具合に、3月に新しい寮母さんが見つかりました
私のように、夕食の献立を考えるのにうんざりしはじめていたものにとっては、まさにすくわれた思いでした。しかし、この経験を通して、寮母さんの苦労の一端にふれることができたようにも思います。
次に食費値上げについてですが、このところの物価の値上がりから考えれば、当然のことでしょう。ある資料によると、下宿代などは、昨年にくらベ1ヶ月当り3?4千円は高くなっているそうです。このような情況と、寮母さんからの要望もあって、食費値上げが承認されました。この他、本代の値上がりなども考え合わせると、寮生活といえども安心していられないようです。
ところで、これからの寮の行事には、新歓コンパと合同ハイキングがあります。特に合ハイは、前回の秋の予定が流れたためか、より一層の期待が集まっているようですし、また担当の係もはりきっています。まだ期日、行先などは発表されていませんが、楽しみなところです。
また、近々天気のよい日を選んで、寮のまわりの清掃が行なわれる予定です。冬の間、雪の下にうずもれていたゴミやクズが、雪が消えるとともに目ざわりになっています。それが一掃できれば、すがすがしい寮生活を送ることができるでしょう。
このようなところが、寮の近況です。
話は変わりますが、この原稿を書くのを機会に、以前の (仙台)興譲館だよりを読んでみたのですが、先輩方の努力の跡をうかがい知ることができて、大いに参考になりました。例えば、寮内文集を発行したり、町内に呼びかけて野球大会を催すなど、今の寮とは違った活気があります。こういった先輩方の経験をふまえながら、今の私たち自身も、活気のある寮生活をしていきたいものだと思っております。
最後に、寮生を紹介してペンを置きたいと思います。
大学院
海野 洋 東北大 理
4年生
安久津 徹 東北大 理
大浦 正行 東北大 工
佐藤 祥一 東北大 工
鈴木 益夫 東北学院大 経
関 猛 東北大 文
3年生
遠藤 雅弘 東北大 経
金内 斉 東北大 工
佐藤 悦雄 東北学院大 経
清水 智誠 東北大 経
高橋 省 東北大 工
宮崎 努 東北大 工
2年生
安部 俊明 東北工大
石塚 諭 東北福祉大
大場 正博 東北大 工
小浦今朝雄 東北大 工
佐藤 政司 東北工大 理
高橋 修一 東北工大 理
竹田 吏 東北工大 理
皆川 敏郎 東北大 経
武藤 司 東北工大
山口 浩 東北大 工
渡部 明夫 東北大 工
渡辺 雅訓 東北工大
1年生
上杉 則彦 東北大 工
朽木 慶一 東北大 教
佐藤 茂次 東北大 農
鈴木祥一郎 東北大 理
星 裕之 東北福祉大
我妻 宏司 東北福祉大
以上30名
札幌興譲館
春うららか、こうやって腹をすかして終日寝そべっていると、無性に昔の良き時代が思い出されてくる。ある人などは、わたしの長いひげをひっぱって、お前は何も考えることなどあるまいから幸せなやつだ、などと言ってくれますが、どうしてどうしてこれでもいろいろと考え、悩むこともあるのです。特にこの頃は年のせいか、つい昔のことが思い出されてならない。わたしが、この米沢寮とやらに連れてこられたのは3年前のことで、兄といっしょだった。以来仲良く暮らして来たのに、その兄が去年の春に、皮肉にも猫不要を食って死んでしまった。何の因果がこの仲の良い兄弟をひきさいてしまったのか。自分のことを考えると、ついこの身の不幸を悲しむことになるから、愚かな人間界のことでも思い出すことにしよう。
去年の春には、7人の新参兵がやって来て、かなり寮の雰囲気も変わったものだった。わたしは、御主人の吉村おばちゃんの後ろからこの様子を見ていたものだが、そのおばちゃんも秋には引っ越していってしまった。その後に残されたわたしは、どんなに苦しい思いをしたか誰もわかってはくれない。
思い出は前後するが、6月頃にはダンスの練習とか称して、寮をあげて、さかりがついたように騒ぎ狂っていたものだった。いやもうそのうるさいことといったら、あれでも自称理性のある人間のすることかとつい思ったものだ。相手は静某寮とかいう女子寮の姐ちゃんたちだそうだが、去年も、その前の年も、同じところとやっているというから、ここの寮生も、進歩がないというか、義理固いというか、とにかく好き者もいるものだと感心した。しかも、秋にまた同じ寮とダンパをやったという。こうなると、ああ、あわれと落涙の心地ぞする。
わたしは、人間界の複雑な出来事にはあまり関心がないから、ただこうやってつらつらと眺めているに過ぎないけれども、やはり何といっても、わたしの御主人がどこかへ行ってしまったは大きな痛手であった。今の大葉おばちゃんがやって来るまでは、それこそ毎日が飢餓地獄であった。けちの権化みたいな寮生からは、たいした食い物も期待出来ないから、仕方なく自分で何とかしなければならなかった。桑園地区の某所から、夜陰に乗じてハムを失敬することを覚えたのもこの頃だった。しかしあわれなるかな。せっかく苦労して手に入れたハムも、寮生の手にかかって鵜飼いの鵜よろしく分捕られてしまうのであった。にっくきは寮生、いやそういうことを平然と出来るようにした欠陥教育、いやいや政治の貧困、しかしこの場合そんなことはどうでもいいのだ。とにかくそういうわけで、あのころは餓死の心配で夜も寝られなかったものだ。
さて、新しいおばちゃんも決まって、ようやく食料事情も好転してきたと思ったら、今度は寮の井戸水が枯れて、水がさっぱり出なくなってしまった。夏場の異常乾燥と高層ビル林立、おまけに東西に横ぎる地下鉄工事のせいであるなどと寮生は言っていた。10月頃から様子がおかしかったらしいが、12月に入ってからは、ポンプも空転するばかりになってしまった。水などは出ても出なくても、わたしにはあまり関係がないから、高処の見物を決め込むことにした。こんなことになったのも、ひもじいわたしから食い物を奪った天罰と溜飲を下げたものだった。寮生は、水問題対策委員会などをつくって、あちらこちらと騒ぎ回った結果、今年の2月9日にようやく新しく水道をひくことが出来たようであった。延々3ヶ月にわたる大活劇であったが、その間、風呂、洗濯もままならず、2週間位風呂に入らなかった強者も出て来たりして何となく薄汚れ仁ムードが寮内に漂っていた。毎日身体をみがいているわたしなどは、吐き気をこらえるのに一苦労したものだ。それでも、隣りの仙台寮からバケツで水を運んだり、土方工事をしたり、寮生もよう頑張ったものだ。これには、さすがのわたしも寮生を見直した。
いろんなことを見聞したおかげで、わたしもずいぷんと利巧になった。ただ、人間にはそれが解らないだけだ。もっとも、人聞がわたしのことを何と思おうとあまり関係のないことだけれど。
この春には、わたしをかわいがってくれた人も、またいじめてくれた人も、この寮から出てゆくことを考えると、ちょっと寂しい気もするけれど、それもまたこの浮世の定めと思えばどうでもいいことなのだ。わたしは、どちらかというと楽天的なほうだからね。さて、空腹をまぎらすにはこうやってストーブの傍らでごろりと寝ているに限る。はい、おやすみ。(寮の愛猫ピンコちゃんのひとりごとから)
新寮生
鈴木 仁志 北大教養部
長岡 昌信 同
藤沢 薫 同
松田 正 同
横山 昭則 同
昭和49年卒業生
山水 史夫 北大大学院理学部卒
小沢 正明 北大農学部卒
佐藤 哲 北大農学部卒
4年目
海老名 寛 北大農学部
遠藤 一栄 北大工学部
鈴木 吉行 北大農学部
平田 透 北大工学部
3年目
孫田 敏 北大教養部
逸見 英男 北大工学部
2年目
鈴木 啓助 北大理学部
板元 邦夫 北大教養部
須見 正弘 北大農学部
北条成二郎 北大教養部
松田和一郎 北大教養部
芳賀 秀樹 北大大学院文学部
今田 博三 北大教養部