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米沢有為会会誌復刊18号(昭和44年8月)
興譲館だより(昭和44年、1969年)

東京興譲館

 武蔵野の春は土の色から変るという。ここ武蔵野の面影を残す調布も、豊かな、すがすがしい緑の季節にサヨナラして、青春の燃えあがる夏を迎えようとしている。近くの野原に夏草のにおいがむせかえる様になった。
 さて当寮において13名の有為な4年生の諸先輩を送り出し、あらたに11名の希望に燃えたフレッシュマンを迎え、一層明るさがました。尚、村上晃一氏は慶大工学部を卒業され同大学院に進まれ、当寮に残って我々後輩の良き兄貴として指導していただいている。大学生活に対してあふれるばかりの希望をもって入寮した新入生諸君は、始め寮生活にとまどっていた様子でしたが3ヵ月程たった現在、各々の個性をいかんなくはっきし、寮生活にすっかりとけこんでいます。歓迎コンパ等では新入生諸君の日常見られない一面を見てたのもしく思われました。先輩から受けついだ寮の伝統を新入生と共に創ってゆくことを考えると、楽しい気持にさえなる。なお新入寮生の中に都立大研究生の佐藤さんが入寮された。佐藤氏のユニークな個性は当寮の人気を独占している様子さえある。この様なすばらしい乗組員をようした興譲館丸は大きく船出しようとしている。さて当寮の世話をしていただいた寒河江きよおばさんが辞められました。わがままな寮生の相手をして下さった苦労は並大抵ではなかったろうと思われます。寒河江おばさんに代わって新しく矢野ふじゑおばさんを迎えました。おばさんは米沢市関根のご出身で非常に明るい性格の方です。両おばさんと舎生とが話しているとコント55号にまさるともおとらないやりとりになる時もあります。我々舎生一同非常に喜んでいます。
 恒例の春の旅行は、矢野、梅津両おばさんと共に日光に遊びました。旅先の風土を見、人情を考え旅行のたのしさにひたりました。また先日山形県5対抗野球大会が荒川グランドで開かれましたが第1試合終了後、雨が激しくなり残念ながら中止となりました。秋に再びやることを約してコンパに移り各寮との交流を深めた。また現在寮内において「原書講読会」が2つ程あり、朝夕勉学に励んでおります。寮生の中からそういう意識がおこり積極的にやっているのは興譲館の新しい伝統の萌芽ではなかろうかと思われます。我々39名の寮生は大学紛争の中で、積極的に大学を論じ、学問を論じ、人生の何たるかを語り、恋愛の何たるかを語り合い有意義な寮生活、そして学生生活を送っている。

    4 年 生
 加 藤 真 琴  日体大
 川 合 勝 雄  東教大 理
 小 島 和 夫  東経大 経営
 小 林 政 行  東経大 経済
 佐 藤 真 人  早大 商
 鈴 木 正 弘  法大 工
 棚 橋 千 秋  法大 法
 橋 本 敬 三  東経大 経営
 松 木 良 光  中大 経
    3 年 生
 菅 野 憲 幸  中大 法
 庄 司 芳 彦  明大 商
 鈴 木 和 美  青学大 法
 鈴 木 時 夫  学習院 径
 兵 庫   等  中大 理工
    2 年 生
 伊 藤 秀太郎  明大 法
 大 熊 善 蔵  中大 商
 大 場   明  東大 理二
 川 越   治  中大 商
 小 林 伸 一  立大 社
 斎 藤 和 博  学習院 文
 庄 司 和 昭  和光大 経
 関     博  東経大 経
 武 田   篤  青学大 理工
 中 川   了  上智大 外
 長 沼   健  明大 工
 福 崎   進  工学院 工
 横 山 敬一郎  明大 工
   1 年 生
 伊 藤 隆 明  東経大 経
 加 藤   透  早大 理
 加 藤 喜 広  中大 商
 金 子   哲  法大 工
 佐 藤 俊 治  早大 商
 佐 藤 憲 一  慶大 商
 鈴 木   均  早大 文
 戸 田 直 博  専大 経営
 山 上 了 史  国学院 文
 我 妻 武 司  口大 文理
   大学院生
 佐 藤 正 義  都立大 法
 村 上 晃 一  慶大 工
 渡 部   昭  東教大 農
   副 館 長
 井 熊 征 一


仙台興譲館

 この所、毎日よい天気に恵まれているここ杜の都仙台は今が一番過し易い季節ですが、有為会の皆様はいかがお過しでしょうか。
 皆様ご存知のように、我が仙台興譲館寮は新館と旧館の2棟で、寮全体が"コ"の字になっていました。ところが、旧館は既に耐用年限を過ぎていましたので去年の夏、新館を除く旧館、食堂、便所、風呂場、そして寮母室が改築され、あらたに図書室、物置小屋が増築されました。これは宇佐見会長はじめ、有為会々員皆様の多大なるご尽力によるもので私達舎生一同深く感謝しております。
 静かな環境と、交通の便に加えての新寮で、舎生は勉学に励んでおります。
 さて、恒例の秋の芋煮会は小雨の中を奥新川で、春のピクニックは某女子大と合ハイという形で相の釜へ行きました。4年生は老体であることを意識してか、若返ろうとたいへん努力していたようです。夫々まずまずの成功をおさめました。
 文化的活動も活発に行なわれています。寮内文集"ミスカントス"もいろいろな形式で行なわれ、全員が原稿を提出したくらいです。それに読書会もときどき催され、皆熱心にやっています。
 休日ともなると、舎生は近くの広瀬川の河原へ出て、野球、バレー、サッカーなどをして運動不足をおぎなっています。また最近は中庭でかっての食卓を卓球台肥使って卓球のナイトゲームもやっているようです。
 それからこの頃は非常に音楽熱が高まってギターやその他の楽器を楽しむ諸君がふえ、フォークバンドもでき、練習しだいではいいところまでいくと思います。
 また2、3年前舎生の一員として暮していたミーコという猫の後釜として今は教鞭をとっておられる滝口先輩がもらってきたチャコという猫が舎生と共に毎日元気に暮しております。
 以上で寮の近況報告を終り、最後に舎生を紹介してペンを置きたいと思います。

相の釜にて

    4 年 生
 神 尾   仁  東北大学文学部
 小 林 晄 徳  東北大学工学部 
 鈴 木   寛  東北大学工学部
 田 中 俊 夫  東北大学工学部
 干 塚 宮 雄  東北大学文学部
 中 村 隆太郎  東北大学農学部
 芳 賀 彦 一  東北大学理学部
    3 年 生
 衣 袋 貞 雄  東北大学工学部
 遠 藤 光 広  東北大学理学部
 金 田 裕 和  東北大学理学部
 笹 木 邦 明  東北学院大学経済学部
 高 橋 良 見  東北大学理学部
 竹 部 憲 次  東北学院大学経済学部
 半 田 喜代二  東北大学工学部
 横 井   博  東北大学理学部
    2 年 生
 海 野   洋  東北大学理学部
 金 子 真 一  東北大学工学部
 近 野久左ェ門  東北大学教育学部
 紺 野 洋 一  東北大学経済学部
 高 野 茂 徳  東北大学法学部
 南 斉 敏 夫  東北学院大学経済学部
 本 田 政 夫  東北学院大学経済学部
 本 間 雄 二  東北大学工学部
 山 口 丈 志  東北学院大学経済学部
    1 年 生
 佐 藤 健 治  東北学院大学経済学部
 佐 藤 祥 一  東北大学工学部
 沼 沢 幸 雄  東北大学工学部
 松 田   孝  東北大学工学部
 和 田 彰 造  東北大学理学部


札幌興譲館

 もう5月も末というのに、夜になると、風がヒューヒューと電線をうならせ、寂しく窓の戸をたたく日が続きます。冷害の心配を報道する新聞記事も、チラホラ目にする今日この頃です。しかし、構内のポプラやエルムが柔い緑の葉をつけ、大通り公園の花が色とりどりに美しく咲き、郊外には北大のバッヂになっているエンレイ草の白い花をみる時、やはり初夏の到来と爽かさを感じないわけにはいきません。では、札幌の近況を、お知らせします。
○三月 戸田 剛(北海学園大学経済学部)
    平 徳雄(北大法学部)
    山村 勝(北大農学部MC)
    高橋和子(北大理学部)寮外生
の各先輩を"追出し"ましたが、残念ながら期待した新入生はゼロで、この予期しない出来事に寮生一同は、新入生を迎えてのいろんな楽しいユメが、一ぺんに吹きとばされ、しばらくは、意気消沈した日々が続きました。こういった意味で、寮というものも、生き物のようなものであって、やはり新入生が入らなかったら、エネルギーも出てこないことを認識させられました。今年は、高校の方に、積極的に働きかけて、来春は、大量に新入生を迎えたいと考えています。
 さて、寮生活の方ですが、一時さかんだったマージャンも、近頃は、滅多にパイの音も聞けなくなり、かわってどういうわけか、音楽方面が、非常に流行しています。ギター、オルガン、尺八等に興味が示され、またレコード、ラジオ、テープからは、快い音楽が聞えてきます。身の囲りが、騒しくなってきたため、静かな、落着いた時間をみんなが夫々大切にしている気がします。
 
○雨の後のたけのこのように、全国に生じている大学問題ですが、静かなエルムの学園だった北大も、御多聞にもれず、入学式に初めて、お目見えしたゲバルト学生でしたが、その後、急速に問題をエスカレートしてきています。5月20日には、中央の大学並みに本部封鎖、学長軟禁という事態を生じました。現在マスコミで様々に批評されていますが、実際、紛争を目のあたりにみることは、何か歴史の夢物語を経験しているような幻想を抱かせます。果して後世の人々は、我々の時代をどんな感じでとらえるのでしょうか。寮生の話題も近頃は、大学問題が中心で、みんな、夫々疑問を出しあい、意見を述べあって、考えを深めていっている様子です。

○昨年の寮の修学旅行は、10月、秋の層雲峡でした。ここは旭川からバスで1時問くらいのところにありますが、丁度天候が良く、川の水は紺碧、そびえたつ絶璧、その間から流れ落ちる白い滝、周りには紅葉、黄葉......、貧弱な表現力では到底その美しさ、素晴しさをいいあらわせません。
 一泊して翌日は、大函までのサイクリング。風が強い日でしたが、断崖の上から運んできた落葉の吹雪に我々は、しばし視界を失われました。旅行全体を通して、強烈な色彩が、印象的でした。少々経費が、かかったのが玉にキズ。



○誰が最初に言いだしたのか、寮にヤングパワーとオールドパワーが、なんとなく生じそれがいつのまにか、お互いに認め許しあう様になりました。ヤングパワーの力たるや、各方面に力を発揮している現状です。これもやはり、長年の教育と指導の成果と、ある人はいいますが。大掃除、床みがきでの圧倒的な馬力、レクリエーションでの精力的な計画、準備、またこの間のソフトボール試合にみられた破壊力には、オールドパワーもたじたじ。これからも合ハイ、討論会、ダンスパーティー、etcに各自、各様実力を出してくれるでしょう。

○あたりが、大部静かになってきました。もうみんな夢路をたどっている時間です。それでは最後に、寮生を紹介して、お別れしたいと思います。
   4 年 生
相 田 勝 彦  北大理学部
板 谷 邦 夫  北大農学部
遠 藤 栄 吉  北大経済学部
岡 円 昌 彦  北大医学部
平 田 謙 志  北大工学部
船 山 隆 寿  北大法学部
山 水 史 生  北大理学部
   3 年 生
斎 藤 興 司  北大理学部
   2 年 生
伊 藤   勝  北大教養部理類
酒 井 信 秀  北大教養部理類
   1 年 生
安 部 和 夫  北大教養部理類
   5 年 生
藤 倉 良 裕 北大医学部