米沢有為会会誌復刊16号(昭和42年8月)
興譲館だより(昭和42年、1967年)
東京興譲館
調布のこの近代的な建物に移ってから、早くも半年になりました。月日のたつのは実に早いもので、てんやわんやの大騒ぎで引っ越して来たことなどは、きのうのことのようです。そして旧寮時代と同様、すべて自分達の手でスムーズに運営しようと努力している私達41名の近況をお知らせします。皆様ご存知の通り、東京興譲館は、昨年暮当調布の地に移転新築されました。これは宇佐見会長はじめ、有為会々員皆様の多大なるご尽力によるもので、私達舎生は深く感謝しています。新寮は鉄筋4階建て、暖房・風呂が完備し、製図室・談話室・図書室など、すべて設備がよく、私達は快適な生活を送っています。そして「中身」の方も、建物に劣ることなく、立派な充実したものにしなければならないと舎生一同、張り切っています。
新寮での第一回の卒業生は、安部洋司、五十嵐宏、佐藤陞三、手塚修、豊原重良、中島正臣、平山和博の諸兄でした。そして、新たに12名の新舎生を迎え、総勢41名となり旧寮に比すると、10名以上も増えました。最初は、学校や、東京や、また、あまりにも最新的な設備の整った当寮やらに戸惑っていた新舎生諸君も、もうすっかり生活に慣れて、各自、意欲的に活動しているようです。今年の傾向としては、クラブ活動に参加している諸君が多いことです。ボート、ヨット、ワンゲル、野球、テニスなどの運動や、英字新聞、弁論など、広い分野にわたって活発にやっているようです。このことは、単に寮の生活だけに満足せず、多くの場に自分をおいてみて、広く多くの人を知り、自分の可能性を追求するという意味で、たいへんいい傾向だと思います。同時に、寮という集団の一員であるという自覚と誇りをもって、寮関係の行事にも積極的に参加することが期待されます。
スポーツといえば、寮内でも活発にやっています。立派なテニスコートや卓球台をつくっていただいた事は、とかく、運動不足になりがちな大学生にとって、非常に有難いことです。土曜日の午後や休日などには、卓球のはずむ音、バレーボールのかけ声などが寮内一杯に響いて、非常に健康的な雰囲気を醸しだしています。先頃、学年対抗のバレーボール大会が行なわれました。晴天の下、皆んな上半身はだかになって、まっかに日にやけたり、砂ぼこりと汗でまっくろになったりで、なかなかたいへんでした。トーナメント戦の結果、若さを誇る2年生が優勝しました。また、老体に鞭うって出場の4年生が、堂々、2位となり、喝采をあびました。「よくころんだで賞」や「くたびれたで賞」などの愉快な賞がおくられたりして、たいへんに和やかなムードでした。これからも、各種の大会をやっていきたいと思っています。

スポーツとならんで、文化的な活動も活発です。最近、そのあらわれとして、寮内雑誌「澪標(みおつくし)」が発刊されました。寮の規模が大きくなると、とかく、お互いに話し合う機会が少なくなり、個々人が孤立し、バラバラに生活する傾向か強くなりがちなものです。そのような弊害を打破するために、相互理解を通して、この寮を更に良くしていこうという趣旨で企画されたものです。予想以上に原稿が集り、編集担当者は、うれしい悲鳴をあげていたようです。普段、話しているだけではわからない面が文章のなかにあらわれて、改めて、その人を認識しなおすということもあるようで、なかなか、意義のあるものだと思います。
最近、同好の志が集って、ハワイアンバンドをつくりました。ウクレレ、スチールギター、ベースなどの楽器も揃って、よく練習しでいるようです。"音楽を聴きたい"などとイヤミを言う輩もいるようですが、練習によっては、まだまだうまくなれそうです。このように、音楽熱も高まっています。ギターやウクレレを楽しむ諸君がふえてきて、夜ともなると、あちこちから、甘い音色が流れて来て、なかなか乙なものです。
このような寮生活を基盤とし、私達は、学問やクラブ活動を意欲的にすると共に、今までのよき伝統を基に、新寮という新しい環境の下で、新しい伝統をつくりあげねばならないことを自覚し、毎日を送っています。
最後に6月現在の舎生を紹介して、ペンを置きます。
新入舎生
五十嵐 裕 州 中大商
菅 野 憲 幸 中大法
小 島 建 介 明大政経
寒河江 幸 平 東工大
庄 司 芳 彦 明大商
鈴 木 時 男 学習院大経済
高 橋 賢 二 法大法
兵 庫 等 中大理工
藤 谷 佑 三 東京理科大
本 多 和 彦 東洋大文
宮 坂 孝 夫 中大理工
村 上 徹太郎 法大経営三年
2 年 生
遠 藤 政 彦 東工大
加 藤 真 琴 日体大
川 合 勝 雄 教育大理
小 林 政 行 東京経済大経営
佐 藤 真 人 早大商
節 木 正 弘 法大工
平 隆 武蔵野美大造形
田 中 良 朔 早大理工
棚 橋 干 秋 法大法
橋 本 敬 三 東京経済大経営
村 石 力 弥 専大商
山 田 幸 生 東工大
3 年 生
斎 藤 文 宏 日大法
酒 井 貴 東工大
篠 宮 雅 夫 中大法
鈴 木 常 夫 国学院大文
中 条 良 文 東京歯科大
串 原 和 夫 中大経済
新 野 勝四郎 明大1
西 山 雅 俊 日大理工
沼 沢 弘 之 慶大法
村 上 晃 一 慶大工
山 本 昌 伸 日大文理
4 年 生
伊 藤 秀 靖 中大理工
大 滝 則 忠 教育大文
加 藤 国 雄 東工大
木 村 琢 美 明大商
高 橋 丈 夫 武蔵大経済
渡 部 昭 教育大農

仙台興譲館
ここ杜の都仙台の我等が興譲館寮は、広瀬川の堤近くの静かな環境と、交通の便とに恵まれた所にあります。しかし寮の建物自体は先輩方の心の籠ったものとはいえ、既に耐用年限を過ぎた超デラックスなもので、部屋の間の仕切りは壊れて部屋を1つ間において話ができ、隣室の「密談」が筒抜けなのは無論のことで、ちょっとのことで壁が崩れるため始終掃除をせねばならず、ある部屋は押入れの戸がはいらないため立てかけたままにしておく程となっています。一番心配なのは火災で、勿論起こさぬように万全の注意を怠らず、消火器もちやんと備えてはあるものの、一旦火を出したら忽ち燃え広かつてしまうでしょう。ところが最近我々は嬉しい噂を耳にしました。新寮が建設されるというのです。これで寮ができれば、交通の便に加えて生活環境は満点という願ってもない条件の下で勉学に励めるというもので、寮生一同期待に胸を躍らせてその日のくるのを待ちわびています。さて、恒例の秋の芋煮会はさいがち沼で、春のピクニックは鳥の海でと夫々成功をおさめましたが、残念だったのは女性の参加者が少なかったことで、皆今度こそはと張切っています。文集作成も今年度は多くの文科系の学生がはいったこともあってますます盛んです。それに加えて読書会が催され、皆なかなか熱心で前途が期待されます。
最も大きな出来事といえば、新しく寮母さんをむかえたことです。今度の寮母さんは全く快活そのものといった人で、寮生と腕相撲までする元気の持ち主です。また実母の如くに優しくまた厳しい人でもあります。寮生のことを親身になって考えてくれ、また注意してくれます。寮生一同素晴しい寮母さんを得た事を心から喜んでいます。
また変わったこととしては、今はもう教鞭をとっておられる江田先輩がもらってきた子猫を寮母さんが飼ってくれることになり、ミーコと名付けられ、寮の一員として暮すようになったことかあります。
以上で寮の近況報告を終り、最後に寮生を紹介して筆を置きたいと思います。
4年生
高 橋 英 機 東北大学教育学部
戸 田 隆 東北大学工学部
3 年 生
安 部 孝 二 東北大学工学部
伊 藤 和 夫 東北大学理学部
伊 藤 庄 一 東北大学工学部
片 倉 俊 彦 東北大学医学部付属X線技師学校専門課程
加 藤 義 彦 東北大学工学部
滝 口 政 彦 東北大学理学部
松 田 修 東北大学工学部
松 本 耕 輔 東北大学工学部
2 年 生
岡 部 寛 一 東北大学工学部
神 尾 仁 東北大学文学部
小 林 眺 徳 東北大学工学部
島 津 博 徳 東北大学工学部
鈴 木 寛 東北大学工学部
大道寺 七兵衛 東北大学医学部
田 中 俊'夫 東北大学工学部
手 塚 宮 雄 東北大学文学部
芳 賀 彦 一 東北大学理学部
1 年 生
衣 袋 貞 雄 東北大学工学部
遠 藤 光 広 東北大学理学部
金 田 裕 和 東北大学理学部
笹 木 邦'明 東北学院大学経済学部
高 橋 良 見 東北大学理学部
竹 部 憲 次 東北学院大学経済学部
半 田 喜代二 東北大学工学部
横 井 博 東北大学理学部
我 妻 敏 東北大学医学部
札幌興譲館
この所、2、3日降り続いた雨も、カラッとあがって、今日はいかにも札幌の初夏という感じです。北大構内には、例年のごとく、観光客が訪れ、観光北海道もスタートしました。6月を迎え、札幌は今が一番過ごし易い季節ですが、全国の米沢有為会の皆様、いかがお過ごしでしょうか、この度、札幌興譲館改築が実現の運びとなりました事を寮生一同深く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。9月の完成を楽しみにしております。芝生の緑は鮮やかで、空にはカッコウが鳴き、正にこの世の春の我々ですが、そんな札幌より近況をお知らせします。
▽追い出しコンパ、歓迎コンパのこと
3月、孫田忠誠、古沢友宜、山村勝のダンナ連をようやく追い出し、4月、わずかに2人の新入生を、淋しく迎えました。例年のごとく、学生の酒、二級酒をどんぶりで飲んでいただきましたが、今年の新入生は、すごい張り切りようで、2人で例年の4人分位飲み、かつ騒ぎ、おかげで近年になく盛り上ったコンパでした。期待すべきか、恐れるべきか、大いに迷っている我々です。
▽札幌興譲館、修学旅行
毎年10月には寮の修学旅行が行なわれ、寮生一同、大いに羽根を伸ばしてくることになっていますが、昨年は、糠平、然別(しかりべつ)の湖をおばさんを含む16名で周って来ました。例年1泊なのですが、昨年は鈍行イライラックの車中泊りと合わせて2泊。貧乏人の多い寮生のことで、旅の恥はかきすて、あちこちで珍談、奇談を残して帰って来ました。今年は7月から9月まで寮の工事なので、その間に、各地の飯場でアルバイトをしながら、1ヵ月の予定で北海道を一周しようなどという案が出ていますが、どうなることやら。
▽読 書
寮のマンガブームはいまださめやらず、サンデー、マガジンは毎週欠かさず読んでいます。マンガの出たその日から、もう次が読みたくて、東京の先輩から電話があった時など、何をおいても、まずそのことを聞いたりして、楽しんでいます(ほとんどの雑誌が本州より2、3日遅れて発売になる)。でもさすが、大学生は大学生で、目下、飾るためか、読むためかどうかは別として、盛んに全集ものなど買いあさっているようです。

▽寮改築のこと
有為会の皆様のおかげて寮の改築が実現することになりましたが、そのことで目下寮生聞で色々な話が交わされています。焦点は、工事の期間中、どこに寝るかということです。特に、2年生が夏休みの前に試験があり、寮に住めないことになると、大いに困る訳ですが、それは、館長の御配慮で、その期間中は外まわりだけということになって2年生一同はほっとしています。それでも、夏休み中帰省しないで、アルバイトでもしようと思っていた連中にとって、事は重大で、あそこの家に何日、ここの家に幾日と、ない頭をひねっています。それでも足りないところは、どこかの飯場にでも泊り込みで、アルバイトにいくかなどとケンケンガクガク。でも寮の連中のことですから、いつもの調子で、スイスイとやっていくことでしょう。寮の改築という大事を前にしての小事は、問題になりません。
▽その他、寮内での出来事
改築の方はさておき、寮内で一番問題になっていることは、寮費の問題です。諸物価値上がりの折から、寮費も例外ではなく、天井を知らずでどんどん昇っていきます。2、3年前までは、毎月5千円も払っていれば、12月あたりは、払わなくともすむというような状態でしたが、今はもうそんなことは夢物語。今月は、7千円を越そうという勢いで、寮生のふところも、風邪のひきっぱなし。いきおい飯場云々という話も出てこようという訳です。いつだったか会計が「寮費はかく順調に上って行く」というグラフを作っていましたが、こうなるともう『順調』どころの騒ぎではありません。
財布のからっぽなのと反比例して、寮生の食欲は旺盛、士気また旺盛です。先だっては、近くの会律寮と、ソフトボールの試合をやりました。結果は、腹がへっていたためかどうか、見るも無惨な有様でしたが、今度は、ひっくり返してやろうと作戦を練っています。
その他、合同ハイキングあり、ダンスパーティーあり、そしてまた勉強、勉強ありで、札幌興譲館の寮生一同、精一杯毎日を過ごしています。それにはまず、食物、次に睡眠で、今日も、もう、お休みになった方もいらっしやる様子。ずいぶん静かになりました。
それでは、最後に寮生を紹介して更けゆく札幌よりさようなら。 (余破記)
1 年 生
斎 藤 興 司 北大教養部理類
飯 沢 理一郎 北大教養部理類
2 年 生
船 山 隆 寿 北大教養部文類
遠 藤 栄 吉 北大教養部文類
岡 田 昌 彦 北大教養部医進課程
山 水 史 生 北大教養部理類
板 谷 邦 夫 北大教養部理類
相 田 勝 彦 北大教養部理類
3 年 生
藤 倉 良 裕 北大医学部
戸 田 剛 北海学園大学経済学部
平 徳 雄 北大法学部法律学科
4 年 生
半 田 謙 志 北大工学部土木工学科
須 藤 誠 一 北大農学部畜産学科