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米沢有為会会誌復刊10号(昭和36年8月発行)
興譲館だより(昭和36年、1961年)

東京興譲館

6月の雲は、低くたれ下がり、今年も又、ウェットな梅雨がやって参りました。その雲のむこうに、ギラギラ照りつける太陽があるのです。梅雨は真夏への前奏曲とも云えましょう。そして、寝苦しい夜が続く様になりました。今日は皆様に東京興譲館の、28人の侍の話をしましょう。この28人の中には色々変った侍が居ますが、中でも今年の新入侍は豪傑揃い。彼等がアルコールを補給して帰って来る時等は、戦利品を持って帰って来るのが居ります。これは当興譲館の侍連中の伝統的(?)習癖の一つ。その中に、商店の看板から庭ぼうき迄色々ある。そんな時決って彼等は、上級生の部屋に押し寄せて来るのです。上級生たる者、そこは睡い目をこすりながら、バッカスの火の水をどの位飲んだとか、ヴィーナスが、いかに微笑んだとか、諸々の戦果を聞いてやらねばならないのです。又、彼等の機嫌の良い時は、醤油とソースとコショウと塩のカクテルを馳走してくれる時もあります。又、寝ていて、彼等にコショウを見舞われ、悲鳴をあげるのも居ります。こんな侍連の大時代的なバンカラぶりを、「復古的センチメンタリズム」と呼ぶのは、ひがみかも知れません。
又、各部屋に集っては、時事問題、経済問題について、熱っぽい討論が成される事が度々である。いささかアルコールでも入っていると、夜のふけるのも知らず、尽きる事がない。こんなのは、やはり上級生に多いようです。中でも、4年生は、そろそろ就職戦が近くなったせいか、話もごく現実味をおびて来ます。夜も12時を過ぎると、"ネズミ"が徘徊する。ネズミと云っても、あの小さなネズミではありません。寮では12時を過ぎると、残っている御飯を食べても良い事になっているので、おなかを空かした者が戸棚をガタゴトやる所から"ネズミ"と呼ぶ様になりました。こうして、2、3人でチャーハンを作って食べるのですが、これも仲々の腕で、店で食べるより、美味しい。しかし翌日、おばさんに、お叱言をいただくこともあります。
先月末に寮でテレビを購入し、毎晩思い思いの番組を楽しんでおりますが、夜に寮を留守にする舎生も幾分少なくなった模様。
寮の庭に遊びに来ていた子供達も今月からシャット・アウトしたので漸く静かになりました。今日も又、夜が訪れました、28人の舎生は、思い思いの夜を過すことでしょう。田舎に手紙を書く者、友人と話に花を咲かせる者、テレビを見る者、勉強する者、ギターをポロポロ弾き、感傷にひたる者、夜、洗濯を始める者、アルバイトに出かける者、読書する者等々。部屋によっては3時過ぎ迄灯りがついていることでしょう。

 石原俊一(日大法4年)   米沢市
 片桐勝朗(外語大西語4年) 米沢市
 楠川興平(東経大4年)   米沢市
 越津浩 (東京薬大4年)  長井市
 進藤甲三(成城大経4年)  米沢市
 鈴木良平(工学院大4年)  米沢市
 高野良彦(学習院政経4年) 米沢市
 大塚直敏(青山学院大文3年)米沢市(委員長)
 勝見正弘(法大社3年)   米沢市
 佐藤孝夫(中大法3年)   米沢市
 宍戸仁 (法大法3年)   米沢市
 羽隅弘宣(立大経3年)   米沢市
 花角慎一(明大法3年)   米沢市(会計)
 山方雅晴(法大経3年)   米沢市
 赤井淳一(日大農獣医3年) 岩手県
 川越一郎(上智大経2年)  米沢市(文化厚生)
 木村貞二郎(国学院経2年) 米沢市(庶務)
 時田威 (法大経2年)   白鷹町
 中村紘一(東京薬大2年)  米沢市
 羽田和雄(教大教2年)   白鷹町
 横山東士(教大体2年)   赤湯町
 佐藤毅 (日大理工2年)  米沢市
 高橋英也(立正大経2年)  川西町
 井熊征一(早大法1年)   米沢市
 後藤芳雄(教大体1年)   米沢市
 筒井善二郎(早大理工1年) 米沢市
 宮森茂 (青山学院経1年) 米沢市
 村山晃也(明大農1年)   米沢市
                       (大塚記)


山形興譲館

例年にない大雪に見舞われた、みちのく、山形も太陽がいっぱい輝き、田植の終った周りの緑は益々深くなってくるばかりです。
街の様子も都会らしく変化し、盃山に登ると、一目にして東北の都会山形市が見える。高層建物の大沼、丸久デパート、近代的な山形放送局、山形新聞社、いわくつきの七日町通り一名ドッペリー横丁、伝統ある興譲館寮、その向いの洋裁学校も一目に見渡すことが出来る。
早朝のアイサツも目をこすりこすり「お早よう」、昼に起きても「お早よう」、とにかくいつ起きても起きた時は「お早よう」から一日が始まる。
山形寮も今年で6才の誕生を迎えることになる。開館以来この間、格別大事件も起こさず着々と他の興譲館寮に負けぬように整備をととのえようと頑張っています。独自の気風をつくり、その中で学生時代を充分に満喫出来るように色々と幾多の御尽力をして下さった支部の諸先輩並びに有為会の皆様に深く感謝致します。
春とともに冬眠よりめざめて寮内の新陳代謝も激動をして来た。3月4日に3人の卒業生を送り、更に米沢にある工学部専攻の学友5名を送り出し、新入舎生10名を入れて現在27人の家族を構成している。卒業生は、今年は特に優秀だったので例年にならって100パーセントの就職率を示しています。青春と希望で胸一杯抱いている新入舎生を迎え、4月22日千歳公園の護国神社境内で観桜会を兼ね、更に支部の方3人来ていただき、桜ふぶきの木の下で、そろそろメーターが上って、桜の歌に始まりついにドドンパで最高に達して、インスタント歌謡で第一部野外パーティが終り寮に先ずは帰る。さてメーターの上った所でネオンまたたく夜の巡回をして朝"お早ようございます。おやすみなさい"と帰ってきた。新入舎生諸兄も古トラにおとらずなかなかのやり手である。勿論全ての面において大人しい山形寮の古参連を目覚ましてくれた。頼もしい新入舎生諸兄を迎えて一層活動的にやろうとはりきっています。
昨年の9月より、当番という役を一日交代に各部屋巡回するよう決めた。役目は集会室の掃除と「楽書帳」をつけることだけである、「楽書帳」も3月で第1巻を完成した。その「らくがき帳」とは寮の日記帳ともなり他の人と意見を交す寮内回覧ともなる。勿論「らくがき」をしたくなった時はいつでも集会室に行って「楽書帳」をもってきて特筆してもかまわないのである。
夜ともなれば、学問に疲れたような顔をしてちらりほらりと集まって人生論、恋愛論、学問、エトセトラ、の話に花を咲せ、時には大トラ小トラの出没もする。夜半すぎ、ロマンチックなギターの流れにのって静かに誰かが口ずさんでいる。隣家は何をしているのかを気にかけながらも、・・・最近大部ギター熱が盛んとなり、寮にもスチール入れて3、4台ある。相変わらず黒、白の判定に熱を上げ、「中国語」も熱心に勉強している。しかし4月より、土、日以外の平日は、12時まで「中国語」の「東南西北・・・」の勉強が禁じられたので昨年ほどではない。寮生のメンバーは東京、仙台の寮と異り、昨年度より10名近くの他県人を含んでいるが、此頃では、その人達も興譲館の気風というものをとり入れてくれたり改善してくれたりして、新しい山形寮のふん囲気を作っています。更に今年4月から今まで、永年つとめて下さったオバサンが家庭の事情で、やめられて、新しく交って下さったオバサンを中心に更に変った雰囲気を作ろうとしています。
最後に年間行事を附記すれば、4月下旬の新入寮者歓迎、10月下旬の寮祭、マラソン大会、イモ煮会、3月上旬の送別会という貧弱な行事しかもっていません。新委員に代ってから、寮内の小さな問題のため委員の方々がとん走していたので、まだ総会らしきものを開いていません。今後委員を中心にして、寮内の親ぼくを深めるような行事を考えてみたいと思っています。全国4興譲館の間にもお互いの交流の機会が年に一度しかないというのは残念です。もっと相互の交流の機会を持つように提唱したい。
有為会並びに先輩、各寮生の皆様の御健勝をお祈りしてペンをおきます。

 在寮生
 青木毅(工学部1) 米沢市
 伊藤宏(工学部1) 川西町
 八重樫龍夫(文理学部4) 岩手県
 小林哲男(教育学部3) 長井市
 小林修司(農学部2) 青森市
 平吹利数(教育3) 白鷹町
 長谷部昭文(農学部1) 白鷹町
 渡辺保(文理4) 宮城県
 後藤章二(工学部1) 長井市
 小松正夫(工学部1) 米沢市
 玉村東夫(工学部1) 米沢市
 小島勝衛(文理学部3) 新潟市
 西村啓  (文理4) 米沢市
 布施雄二 (文理1) 白鷹町
 色摩浩三 (工1)  長井市
 田沢亮  (農2)  青森県
 寿松木俊雄(文理2) 秋田県
 中川鴻一 (農2)  北海道
 渋谷正紀 (文理2) 青森県
 山口富士男(教育2) 米沢市
 山口鉄舟 (教育2) 宮内町
 小島富夫 (文理2) 米沢市
 重野正美 (工学部1)長井市
 木村貞夫 (文理生物3)高畠町
 安部紀男 (教育3) 川西町
 目黒孝雄 (教育4) 長井市
 平吹信彦 (教育3) 長井市
              以上       (木村貞夫記)


仙台興譲館

千古の歴史と情緒を秘める青葉城址のほど近く、緑の風吹き渡る興譲館で、私達舎生は、勉学に、思索に、はたまたスポーツにと実り多き毎日を送っております。
当館増改築に限りない労をとられた猪口館長が、今旬、東北大学を停年退職され、同時に当館長を退任されましたので、舎生一同には、まるで慈父をうばわれたように思え、今更に先生の偉大さをしみじみ感じたことでした。
加えて、私達の敬愛する5人の先輩が、社会人として巣立たれ、(香坂昌紀氏は東北大学文学部助手に、片平利昭氏は松下電器に、佐藤二男氏は東北電力に、船山秀一氏は小国電興に、平昭夫氏はオリンパス光学に)誠にさびしい限りでしたが、此度、新館長として米地先生が就任され、さらに10名におよぶ新入舎生を迎え、興譲館始まって以来のにぎやかな雰囲気にあふれつつも、舎生一同非常な親しみをもって先生の御指導をいただいております。

 相田侃次  東北大薬1  米沢
 梅津恒夫  東北大文1  白鷹
 大友康之  東北大工1  和郷
 斎藤雄三  東北大法1  長井
 鈴木正明  東北大法1  米沢
 高田和寿  東北大工1  川西
 千喜良誠  東北大理1  米沢
 千葉憲治  東北大経1  米沢
 長谷川啓二 東北大教1  高畠
 山口孝宣  東北大農1  宮内
 金田捷記  東北大法2  白鷹(会計)
 金田隆樹  東北大医2  白鷹(厚生)
 鈴木治雄  東北大工2  米沢
 高橋信男  東北大法2  高畠(会計)
 武田俊二  東北大文2  高畠
 中村精三  東北大工2  米沢
 橋本周蔵  東北大経2  白鷹
 加藤正一郎 東北大工2  小国(文化)
 大越文彦  東北大工3  高畠(庶務)
 伊田英男  東北大経3  米沢
 川村志厚  東北大法3  長井(総務)
 種部豊   東北大理3  米沢
 持田正一  東北学院大経3 米沢
 安部英夫  東北大文4  宮内
 湯野川孝夫 東北大工4  米沢

以上総勢25名、全舎生が進取の気性にもえており、いずれをとるとも、まさに前途洋々たるものがあります。
このような力強さを反映してか年中行事たる野球においても目ざましいものがあり、寮内、文科対理科では激しいシーソーゲームの末理科が覇を制し(16対11)、対外試合第一戦地元角五郎丁学生軍と会し、連敗の汚名を返上して快勝した(9対5)。かく、当館の文化活動は4興譲館中随一であろうと自負している次第ですが、ちなみに5月のピクニックには波も静かな松島の海を貸切り船で遊覧し、大高森の景観にしばし我を忘れたことでした。
こうして私達仙台興譲館生は幸福な学生生活を満喫しておりますが、これも諸先輩の御愛顧ひとかたならぬお蔭と感謝しております。(大越文彦記)


札幌興譲館

北海道は、今やリラ、スズランの花の季節を過ぎて、アカシヤの並木が白い花をつけ、甘い香りをホンノリと漂せ、いよいよ初夏の候となりました。今年はレジャーブームに北海道ブームとやらで北大構内にも例年より多くの修学旅行の生徒やら、観光客やらが、御苦労様にも、1講目も始まらないうちからぞろぞろ入り込んで来ます。
ここ数年、寮生にフォークダンスが流行して、新入寮生の2人も早速この洗礼を受けてしまい、寮生14人中10人まで、これにかぶれてしまいました。聞くところによりますと札幌興譲館は「米沢寮のフォークダンスか、フォークダンスの米沢寮か」と札幌のフォークダンス界ではチョットは名の知れた存在らしい。毎夜のごとく、北大、札幌医大、学芸大、女子短大と、どこかでダンスの例会があるため、6時から9時までは、寮内はとても静かです。特に、土曜の夜は、北大のフォークダンス例会があるため、寮の灯は全部消えてしまい空屋の様になってしまいます。9時以後は、いづこの寮とも同じく、ダベリング、夜食と、なかなかにぎやかになります。
昨年は、札幌興譲館の創立30周年にあたり、記念行事として、11月5日、6日は、寮生一同登別温泉に旅行してコンパをやりました。11月23日には隣りの仙台寮、秋田寮、それに庄内寮からと、有為会会員を招待してダンスパーティーを開きました。この時は、会場の飾り付けに、寮生一同以外な天才ぶりを発揮しまして、最高の雰囲気を盛り上げました。12月1日には、有為会主催で、30周年記念祝賀会を開いていただきました。この時は有為会会員多数参加していただき、郷土の話しにひたり、和やかな会でした。又この時札幌興譲館出身の先輩の名簿を作り、又寮の維持基金として寮出身の諸先輩を中心に基金を募ることになりました。
尚今年は、河原紀夫氏が東洋航空測量に就職され、代りに、米沢から2名の新入生を迎え、総数14名となり、全員毎日楽しい寮生活を送っています。以下14名の寮生を紹介します。

冬の札幌興譲館全景

 一年生
  ○南部紀夫(興譲館高校・北大教養部理類1年)
  ○平井利昭(興譲館高校・北大教養部理類1年)
 二年生
  加藤公清 (興譲館高校・北大教養部理類2年)
  本名正文 (興譲館高校・北大教養部理類2年)
  森  一 (興譲館高校・北大教養部理類2年)
 三年生
  安部俊示 (興譲館高校・北大工学部機械科3年)
  恩田正臣 (群馬太田高校・北大教養部理類2年)
  鈴木大和 (山形東高校・北大医学部1年)
  須藤進  (興譲館高校・北大医学部1年) 委員長
  東海林利雄(興譲館高校・北大工学部応用化学科3年) 会計
  沼武良  (函館中部高校・北大工学部精密機械科)
 四年生
  安喰弘  (山形東高校・札幌医大2年)
  間宮博  (興譲館高校・北大工学部鉱山学科4年)
 六年生
  米村尚晃(興譲館高校・北大医学部4年))
 (○印は新入寮生)
最後に、会員皆様の御健康と御活躍をお祈り致します。
先輩の皆様
御元気ですか。ようやく寒さもゆるやいで再び春の陽につつまれる様になりましたね。朝早く辺りが白らみ農学部の向うから陽が昇るころ、寮の囲りの木梢でさわぐ小鳥の啼き声も一段と春めいて聞えます。寮では目下親しい、そして御世話になった先輩を送り出し、代ってかわいい新入生を迎える準備中です。これは、考えてみると30年昔も今も変らないで続いて来たのですね。今年で寮の年輪も更に1つ加え31を数えることになりました。
ところで30年も経つと寮も歳らしいです。冬には吹雪が吹き込み、夏は雨がしのびこみ、窓枠が腐り出したり、ドアが開かなかったり、あちこち大変です。毎年近くの先輩や米沢の人達で小さい所には手を加えて戴いていますが、どうやらここで大きく手当しないと駄目です。それで我々在寮生は全先輩にお願いします。米沢寮が再び立派に立直り先輩と我々の時代ばかりでなく今後も長く後輩の為健在で有ってくれるよう協力して下さい。そして30年の伝統と百余人の先輩を持つ寮が今後更に発展しよく運営されるよう協力して下さい。
前や横そして庭にまで住宅が立ちましたが、四季に亘って咲く周りの美しい花、僕等の中の親しい空気は今も変っていません。先輩の皆さん。どうかお暇の折には寮を訪ねられ、想い出話などを聞かせて下さい。期待してお待ちしています。右お願いと近況を兼ねて。
(36年4月記)
 米村 尚晃   間宮  博   安部 俊示   東海林利夫
 沼  武良   須藤  進   鈴木 大和   加藤 公清
 本名 正臣   森   一   恩田 正臣   平井 利昭
 南部 紀夫   安喰  弘